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弁護士の実力を可視化する   

 初めに 
交通事故被害者側は弁護士に相談しようと思い、ヤフーやグーグルで「交通事故」「交通事故 弁護士」などのキーワードを入れた時、表示される法律事務所や弁護士の数に驚くでしょう。それ以外にもキーワードに応じて広告も多数表示されます。

どの法律事務所HPも「交通事故が得意」「交通事故に強い」等々、自画自賛する内容です。中には新聞のチラシのようなHPもあります。内容は似かよっていて、まず、グラフで損保が提示した金額と解決額を示し、如何に自分の力があるか誇示しています。また、「相談料0円、着手金0円」と安さを強調し、「当事務所が選ばれる理由」や「お客様からの声」をアップし、「自賠責基準<任意保険基準<裁判基準」であるから弁護士に依頼すべきだと声高に叫んでいます。どれも同じようなHPなので、被害者側が相談しようにもどの弁護士に相談をすれば良いか分からない状況になっています。

交通事故電脳相談所がネット界に登場したのは弁護士広告が解禁された平成12年秋であり、その当時は弁護士のHP時代が珍しかった時代です。その後、法律事務所のHPは徐々に増えましたが、多くは債務整理や過払い金返還請求の宣伝であり、交通事故関係のHPは少なかった状況でした。しかし、債務整理、過払い金事件の減少と共に多くの法律事務所、弁護士が交通事故の分野に参入し、現在では上記の通り「戦国時代」の様相を呈することになっています(なお、私は最近になって交通事故の分野に参入して、「交通事故に強い」「交通事故が得意」と宣伝している弁護士を自称交通事故専門弁護士と呼んでいます)。
※貸金業法の改正(平成22年6月18日施行)以降の借入に基づく弁済には過払い金が発生しなくなりました。従って、「戦国時代」となったのはここ数年のことです。

勿論、被害者側にとって「戦国時代」は弁護士の選択肢が広がり、歓迎することですが、余りにも広がり過ぎた選択肢から選択のしようがないという状況でもあります。
物損、頸椎捻挫、14級レベルの事案は恐らくはどの弁護士が扱っても、結果に大きな違いはないと思います。そうした事案は交通事故を主力業務としていない弁護士にもそれなりの頻度での依頼があり、弁護士間での経験の差は少ないと言えるからです。

一方、死亡事故、重度・中度後遺症事案については弁護士としては数年に一度あれば良いほうで、そのためベテラン弁護士でも経験が薄くなりがちです。また、そうした事案はやり方によっては金額の差が大きく出てくるため、弁護士の選択には慎重さが必要です。しかし、「交通事故が得意」「交通事故に強い」という宣伝文句だけでは判断のしようがありません。

 獲得判例数について 
「得意」とか「強い」とかは比較がなければ使えない言葉のはずです。「他の誰かよりも得意」、「他の誰かよりも強い」という使い方でなければなりません。
多くのHPではその「誰か」は「自分以外の弁護士全て」或いは「弁護士一般」を指していると思われます。しかし、「自分以外の弁護士全て」、「弁護士一般」の平均的な力量など分かる筈がありません。自らの解決事例を挙げ、「得意」「強い」と言っているのかも知れませんが、交通事故に強くもなく、得意でもない弁護士がやったとしても同じ解決ができるかも知れません。
結局、HPで交通事故に「強い」、「得意」と謳っていても、「自信がある」と表明しているだけのことで、集客のためのセールストークに過ぎません。多くの方が本当にその弁護士が交通事故に「強い」か「得意」か疑うのは当然です。

私は被害者になったつもりで、弁護士を捜すとしたら「何か客観的な基準がないだろうか」という前提で考えてみました。結局、行きついたのは弁護士の獲得判例数ということになりました。

判例集があるというのは多くの方がご存じだと思います。交通事故関係では自動車保険ジャーナル(以下「自保ジャーナル」といいます)が代表的なものです。
全ての判決が収録されているわけではありませんが、損保関係者、法律関係者から見て興味深い事案、言い換えると被害者側からすれば勝つのに苦労する事案の判決が掲載されています。
そのため、自保ジャーナルに掲載されている判決で被害者側で勝訴(部分的勝訴も含む、以下獲得判例と言います)を収めた弁護士は困難事案につき損保と闘って勝った(またはある程度勝った)と評価することができます。

勿論、「損保関係者、法律関係者から見て興味深い事案」という基準はあいまいさがありますし、基準に合致する判決でも収録漏れはあります。また、和解での解決は無視されています。それ故、獲得判例数で正確な実力を判定することはできませんが、自保ジャーナルに収録されている判決が上記のようなものであることから、同誌に掲載されている判決数(勝訴で被害者側)で「弁護士の実力の近似値」を知ることは可能です。獲得判例数は医師の手術成功例の数に匹敵すると思います。

ただし、判例集に掲載されていても以下の除外すべき判決があります。
・敗訴(あるいは実質的に敗訴)の判決
例えば、高位の後遺障害等級の高次脳機能障害を主張しているにもかかわらず12級~14級の後遺障害(神経症状)しか認めらなかったというもの。被害者の主張する傷病が認められなかったというものです。認定等級よりも多少高い等級を被害者側が主張することは珍しくありませんが、そうした類型に属さないものです。
・損保側、加害者側代理人として表示されている判決
損保側、加害者側代理人は通常は被告代理人として表示されています。
損保側代理人は損保から継続的に案件を依頼されるので代理人として表示されている判例件数が多くなる傾向がありますが、損害、過失、因果関係につき立証責任がないので、その訴訟活動の経験は被害者側にとっては使えません(損保側代理人は知識はありますが立証の苦労を知りません)。
なお、損保対損保の判決も多いため、損保側代理人が原告代理人として表示されていることもありますので注意が必要です。また、債務不存在訴訟が提起されている場合、原告と被告が逆になっています(被告が被害者側)。

 獲得判決数の調べ方 
弁護士が獲得したそうした判決数を調べるのは時間と手間がかかるような感じがしますが、実は難しくはありません。自保ジャーナルにはCDがありますので、キーワードとして弁護士名を入力すれば簡単に調べることができます(以下は2014年上期のCDの数字です。CDは半年に1度更新されます)。

例えば、「西川雅晴」と入力すると「6件」の判決が表示されます。最初の判決は平成17年のものですが、私は平成13年から交通事故(被害者側)に特化しているので、最初の判決が掲載されるまで4年もかかっています。難件に出会い、判決まで行く事件というのはそう多くはないので、一件の判例を獲得するまでには長い時間がかかることになります。
※私の獲得判例についてはこちらをご覧ください。

横浜で交通事故に力を入れている先生の名を入力すると「4件」と表示されます。その先生の事務所には現在8名の弁護士が在籍しておりますが、その弁護士数で4件です。判決要旨を読むといずれも難件であり、その方に実力があることが窺われます。
また、東京で昔から交通事故被害者側に特化して、業務を行っている先生がおられますが、その方は「5件」の判決が表示されます。CDでは判決収録数が限定されているため、新たな判決が掲載される代わりに過去の判決が消去されるので、経験の割には表示される判決数が少なくなります。
仙台で交通事故に力を入れている先生の名では「5件」と表示されますが、1件は被告事件です。

一方、新聞のチラシのような派手なHPで宣伝している事務所や大手クレサラ系の事務所の先生の名を入力しても一件もヒットしません。HPでは膨大な数の相談件数、解決件数を誇っており、また解決事例をみても素晴らしい内容なので一件位は獲得判例があるだろうと思っていたのですが、意外な結果でした。

更にグーグル、ヤフーで「交通事故 弁護士 横浜」のキーワードで検索して上位
10位の法律事務所の弁護士(私、上記の横浜の先生も含まれています)について調べたところ、獲得判例のあるのは3名しかおらず、自保ジャーナルに判決が掲載されるのは簡単ではないことが分かりました。

色々と調べた結果、獲得判例数が数件でも「実力」はあると言えます。
獲得判例数が0件でも「実力」のある方はおられると思いますが、客観的に、また事前に判断ができません。実際に依頼をして初めて分かるということになります(私自身も平成13年~17年は獲得判例数が0でした)。

以上の通り、獲得判例数が弁護士の実力を測る一つの参考とはなりますが、交通事故には特殊な分野もあります。例えば、MTBI、脳脊髄液減少症、PTSDなど交通事故の中でも一般の弁護士が余り経験しない分野です(経験がないのは受任を避ける傾向にあるからです)。そうした分野については獲得判例数を参考にするよりも同種の事案を取り扱った経験のある弁護士のほうが実力が上だと思います。

 結論 
多くのHPで説明されている「自賠責基<任意保険準<裁判基準」はそれなりに真実であり、このことは弁護士に依頼さえすれば、異なる基準が適用され、損害賠償額はアップするということを意味しております。「弁護士」という資格と「赤本」レベルの知識のみである程度の成果を上げることの可能な領域があることは確かです。そうした領域では実力の差があっても結論に影響がない場合も多いでしょう。
しかし、死亡事案、重度・中度後遺症事案は基準の違いだけでは解決できないことが多く、弁護士選びは慎重でなければなりません。

まず、取りあえず相談をして弁護士の雰囲気を把握することは最も大切なことです。
どんな立派な経歴であっても「人の話を聞かない」「感じが悪い」「無愛想」「質問に答えられない」「質問しにくい」弁護士には依頼すべきではありません。

その点をクリアーしたならば「交通事故の通常の処理ができるか」ということが問題となります。
「交通事故の通常の処理ができる」とは端的に言って
・刑事記録の謄写
・後遺障害の被害者請求
2つのことができるか(或いは当然に如く、しているか)で判断できます。この2つは医師の診療ではレントゲン撮影や採血等の基礎的な検査に相当します。「異常なし」という結果が予想できても、基礎的な検査を抜きにして手術をする医師はいません。
※120万円を上限とする傷害部分の被害者請求は通常、弁護士の仕事ではありません。

次に「弁護士の実力」という問題があり、相談者は迷うことになります。
「実力」を判断するのは困難なことですが、全くないわけではありません。既に述べたところから、獲得判例数が間接的ではありますが、「実力」を推測する一つの物差しとなると思います。

 補足 自称交通事故弁護士について H26.11.14
交通事故専門弁護士を自称しているだけか否かを調べるには事務所名で検索して下さい。事務所のHPで業務内容が交通事故のみとなっていたならば自称ではなく本物の交通事故専門弁護士です。実際は「交通事故に特化している」と宣伝していても他の分野にも力を入れている場合が殆どです。

もう一つの調べ方は「離婚 弁護士」で検索することです。「交通事故 弁護士」で検索した時と同じようなデザインのHPが現れ「離婚に強い弁護士」となっていたならば、その弁護士は分野ごとに専門性を誇示するHPを作っているはずです。「交通事故に特化している」とは言えない証拠ですが、当該弁護士が全ての分野に専門性を発揮するスーパー弁護士である可能性も否定できません。信じるか信じないかはあなたの自由です。

また、自称交通事故専門弁護士のHPには独特の特徴があり見分けることが可能です。
特徴の一つは弁護士の実体験に基づく有益な情報・知識を被害者に提供しようとする姿勢がないことです。交通事故に関する教科書的な記載はあるにはありますが、書籍に書かれていることばかりです。
もう一つの特徴は弁護士のマーケティングを手がける企業が作成した集客用HPであるためどれも似たような表現・構成となっていることです。
相談料・着手金0円、チェックシート、増額事例、当事務所が選ばれる理由、相談・解決件数の多さを誇る等の記載があればその目印となります。HPは専ら集客目的であるためそれ以外の要素は切り捨てられ、どのような弁護士か分からないという点も特徴です。
HPのデザインが似通っているのは当然としても、高次脳機能障害を初めとするコンテンツまで似かよっています。内容だけではなく「血の通っていない」点までそっくりです。理由はコンテンツも業者から買っており、みずからの体験に基づくものではないためと思われます。

HPでは自信や実績を強調はしていますが、自信があるだけでは意味がありません。実績といっても獲得判例はどの程度あるのでしょうか。
弁護士の仕事というのは経験を積むほどに思い通りに行かないものだと感じます。うまく行った事件の裏にはうまくいなかった事件があり、本来なら自信や実績を他人に表明することを躊躇させるものが心の中にあるはずです。宣伝とは言え、そこまで割り切れない私には自称交通事故専門弁護士の心理には理解しがたいものがあります。

 補足 増額事例について一言 H26.12.18 
増額事例では弁護士依頼前の損保提示額が14級→75万円、12級→224万円、10級→461万円、8級→819万円等々となっている例が掲載されていることがあります。実は損保の提示額は後遺障害の自賠責保険金の上限額です。多くの場合、弁護士が交渉すれば増額するのが当然の額であり、そこから弁護士の力量は判断できないと言えます。また、増額事例の中にはパターン化して、真実性を疑わせる例も見受けられ、弁護士の選択の手がかりとしては無視して宜しいかと思います(このようなこともあり得るという意味での増額事例もあります)。

増額事例の中には素人を欺くような例も見受けられます。
例えば、死亡事故で保険会社の提示が0円だが、弁護士が介入して3000万円近い額を獲得したというような例です。某法律事務所はこのような事例を大々的に取り上げ宣伝しています。
被害者の過失が大きい場合、任意保険会社が対応しないので提示額は0円です。
しかし、自賠責の被害者請求や自賠責基準で示談をしたならば(任意保険会社は自賠責基準での示談はします)、被害者の過失が7割未満の場合、3000万円を上限とする額が支払われるます。
0円が3000万円に近い額になったと言うといかにも弁護士の能力が素晴らしいと思うかも知れませんが、素人がやっても同じ結果となります。私はこのような事例は弁護士の能力とは関係がないという観点から報酬を低くしております。

なお、解決事例の中に増額事例が多いということは症状固定前の依頼が少ないということを意味しております。交通事故損害賠償事件において弁護士が為すべき重要な仕事として適正な後遺障害等級を獲得することがあります。そこをクリアすると事件の6割は解決したも同然と言えます。弁護士が真に苦労するのは症状固定前の受任から、被害者請求をし、適正な後遺障害等級の獲得するまでです。
後遺障害等級が認定されることが明らかな重度後遺症事案でも適正な等級が認定されるとはかぎらず、細心の注意が必要です。「赤本」や「青本」等の書籍には書かれていない医学面の細部に留意をしなければなりません。等級認定までのプロセスこそ弁護士が深い知識を得る場ということができます。増額事例の多さを誇ることはそうした経験がないことを公言しているに等しいと私は考えています。