交通事故電脳相談所 

高齢者死亡事故と弁護士報酬

高齢者死亡事故で弁護士報酬を獲得額の10%とする例がありますが、その報酬は妥当なのでしょうか。検証をします。まず、以下の設例で高齢者死亡事故の損害額の特殊性を明らかにすることにします。

 設例 
被害者は75歳、男性。無職で年金生活を送っている。年金は100万円(年収)。
相続人は妻及び子供2人。被害者の年金で妻は生活し、子供は独立。
被害者が交通事故で死亡し、過失相殺は20%の場合、損害額はどうなるか。

 訴訟基準での算定 

葬儀費用  150万円

慰謝料   2400万円
 上記額の前後となる可能性もあります。
 
逸失利益   499万円
基礎収入 100万円(年収)
生活費控除 40%
 年金の場合、より高くなる可能性がありますが、扶養者一人の基準としました。
平均余命 11年(ライプニッツ係数 8.3064)
 平成23年の簡易生命表より
計算式
100万円×(1-0.4)×8.3064=499万円

合計 3049万円

過失相殺20%
3049万円×0.8=2440万円

 自賠責基準での算定 

葬儀費用 100万円

慰謝料  1300万円
 内訳
 本人分     350万円
 相続人3人分 750万円
 被扶養者加算 200万円

逸失利益 1457万円
1 就労喪失機会による逸失利益
基礎収入 31万4800円(月額)
生活費控除  35% 被扶養者一人
稼働年数 6年(ライプニッツ係数 5.076)
計算式
31万4800円×12×(1-0.35)×5.076=1247万円

2 年金喪失による逸失利益
基礎収入 100万円(年)
生活費控除 35%
期間  5年(ライプニッツ係数 3.23)
75歳男子の就労可能年数は6年(ライプニッツ係数 5.076)
75歳男子の平均余命は11年(ライプニッツ係数 8.306)
5年のライプニッツ係数は3.23(=8.306-5.076) 
計算式
100万円×(1-0.35)×3.23=210万円

逸失利益の合計 1457万円

以上合計 2857万円 
 過失相殺はしません。

 ここから言えること

・高齢者の死亡事故の算定では赤本基準による算定でも被害者側に特に有利になることは少なく、自賠責基準で示談すべき場合は多いと言えます。
自賠責基準>訴訟基準が成り立つのが普通です。

・損保側は自賠責基準で示談案を提示しますが、損保の示談案を見て「慰謝料が低いから交渉の余地がある、訴訟をすれば有利になる」と言う弁護士は自賠責の算定方法を知らないのだと思います。

・自賠責基準による算定はマニュアルに通りなされるので、弁護士の実力とは関係がありません。そのため、弁護士報酬を獲得額の1割とすることは報酬としては疑問があります。

・基本的には自賠責部分を控除して弁護士報酬の基準となる経済的利益を決めるのが原則です。しかし、その原則を貫くと、自賠責の算定額で示談をする高齢者死亡事故では経済的利益は0円、報酬も0円となってしまいます。
一方、被害者遺族は損保との交渉にストレスを感じており弁護士に委任を希望することがあります。弁護士側としては無報酬で損保と交渉する訳には行きませんので、低額な報酬基準を設定するのが落ち着きどころが良いと言うことになります。
私は被害者請求の手数料と同額の3%(税込み)としております。

・同様の問題は自賠責保険の限度額が高額な重度後遺障害の場合にも生じます。